fundamentalsテキストサンプル(本居あかな)
「何だか、嘘みたいに平和ですねぇ」
隣を歩く女の声に、日番谷は一瞬だけ視線をそちらへ移し、頷く。
見渡す空は澄み切って青く、その中を切り抜くように漂う雲は、嘘のように白い。あの惨劇を思わせるものは、何一つない。
だから、本当に、傷一つない風景……のように思えるのだ。
たとえそれが、上辺だけでも。
「……そうだな」
無愛想なその声にも松本は気に止める様子もなく、笑って肩を竦めてみせた。
「まだ信じられません。もう、五番隊に行ってもあの人の笑顔は見られないんだ、とか」
不自然なところで言葉を切って、複雑な表情で微笑む。
松本の紅い唇は美しい弧を描いて笑みを形作ってはいたけれど、瞳はどこか遠くを見ているようだった。
それは例えば日番谷の中にもある、厳しい現実を生きながらも幼く無垢だった懐かしい思い出を振り返るように。
もう手には戻らないと、今は知っているからこそ、それはとても悲しい笑みで。
嘘みたいに平和、なんて嘘だ。
見ないフリをしても、気付かないフリをしても、こんなにも大きな痛みが、傷が、松本の中には隠されているではないか。
どれほど空が青くても、心知らぬ雲がプカプカ流れても。
見なければ良かった、と、情けないことを思って。
日番谷は胸の痛みに眉を顰めた。
この女にこんな顔をさせた藍染と市丸、東仙に恨みがましい思いを向けながら、それを拭い去れない自身の不甲斐無さを思って、その氷の瞳を険しくする。
脳裏には容易に、彼等の姿が克明に浮かんでは消えた。
あれだけの裏切りがあって、傷付いて……今があるのに、時々夢なんじゃないかと思ってしまう。
五番隊へ行けば今もあの男がにっこりと笑ってくれるような、そんな思いが、いつまでも拭い去れない。
夢だと言われれば、嘘だと言われれば、信じてしまいそうになる。
日番谷は目を閉じた。
『本当かどうかは問題じゃない。「自分の誕生日を知っている」ことそれ自体が、既に幸せなんじゃないかと僕は思うんだよ』
あの、笑顔が。
今も頭を離れない。
ここだけ抜くと、なんか日乱とか日雛とか言う以前に藍ヒツって感じだ!(大笑)
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