未来(日乱好きさんに適当な数のお題使用)
十番隊執務室のソファーは、松本乱菊の私物である。
正しくはソファーは十番隊の備品だし、当然松本がこれの代価を払ったわけがない。
しかしそれでも、そのソファーは松本のものだった。
現に今、日番谷の目の前にはソファーが一つ置かれているのだが……その上に身体を伸ばして横たわっているのは紛れもなく彼女である。
ソファーは腰を下ろすもので横になるものではないと言っているのに。
……それも、仕事時間に。
「……」
半眼で睨みつけても当然、眠っている彼女に効果はない。
規則正しい寝息が答えるだけだ。
勿論起こそうと思えば手段などいくらでもあるが……日番谷は大きく溜息を吐くだけにとどめた。
甘やかしているのかもしれないと思いつつも、どうしても。
自分の気配にも身を起こす様子がないそのさまがあまりにも無防備で、何故だかとても嬉しく思ってしまうから。
松本は他人がいるところではあまり眠らない。
警戒する猫のようなのだと、以前市丸が話していたように思う。
その時は、何だか面白くなくてつまらないことを聞かされたと被害者意識で思ったけれど……でも。
今は聞いて良かったと思う。
それはもう、千年に一度の奇跡で市丸にも感謝して良いとすら思えるほどに。
差なんてどうでも良いし比べるなんて馬鹿らしいことはしない。
ただ、これを知って良かった。隣に何でもなく居ることが出来て、この眠りを守れる立場で、そう彼女が認識してくれていて、良かった。
誰に褒められるより、認められるより、この女の隣に立てる権利と誇りが欲しかったから。
視線を下に下ろせば、松本はくーっと腕を伸ばして伸びをし、また四肢を丸める。
何だか本当に猫のようだ。
くくっと笑って、日番谷はその美しい寝顔の鼻梁に指を伸ばし……軽くつまんだ。
程なくして松本が不服そうにその目を開き「あにふるんでふか〜!!!」と抗議の声を上げる。
寝入っていたにしては、その反応は早すぎた。
いつもとは逆の見下ろす視線に気分を良くし、日番谷は他の者には見せない邪気のない笑みを見せる。
「狸寝入り」
笑いながら開放してやった。
松本は通った鼻筋をしきりにさすりながら目線で訴えてくる。
「……何で分かったんです?」
あたし寝たフリ上手いのにー。
「おまえのことだから」
何でもない顔でしれっと答えると、自分よりも年上の女は呆気なく上機嫌になった。
そんな理由にもなってない言葉で納得すんなよな、と苦笑して。
やはり、自分も上機嫌なのだろうと日番谷は思う。
自分の気配を、霊圧を感じてもまどろんでいられる無防備さが愛しい。
例えば髪に触れても、体に触れても、きっと彼女は動じなかっただろう。その無言の信頼が、何よりも嬉しいのだ。
それを勝ち得ることが出来ている自分が、誰よりも誇らしいのだ。
偽らない彼女の、真実の心。
様々な偶然が重なって共に居られる時間も。
自分の目の前で見せてくれる、喜びも悲しみも、全て。
松本と出会って、彼女を想って……初めて知った、愛しいという気持ち。
誰かの寝顔をどれだけ見ていても飽きないと思ったのだって、初めてのことだったから。
例えばこのソファーで眠っているのが俺だったとしても、きっとコイツは、嬉しそうに笑っていてくれるだろうから。
日番谷はくすくすと笑って、松本の起き抜けで僅かに火照った頬に触れた。
「座ってろ、この俺様じきじきに目覚めの茶を淹れてやる」
尊大な軽口を叩けば、松本がわぁと顔を輝かせて歓声を上げる。
「隊長のお茶ですか! ……ちゃんと飲めるものなんですか?」
「もー淹れてやんねぇ」
「あ、ウソウソ、嬉しいです!! じゃああたしはお菓子を用意しますね。後で食べようと思って買ってきたのがあるんですよー」
茶を淹れて、菓子を食べて、のんびりと過ごす午後。
松本ははふー、と息を吐きながら、日番谷の隣で寛いでいる。
「……幸せですねぇ」
「……そだな」
こんな日常が、いつまでもずっと続けば良い。
飽きるほどで良い。
それでも一緒に居て飽きるなんてことはきっとないから、どれだけ長くても良い。
だから、こういう時間が積み重なって揺るがなくなるくらい、ずっと、ずっと。
他愛無いこの日々が、何でもないこの毎日が……いつまでも。
「あたし隊長と共白髪が理想かもしれない」
「何だそりゃ(///)」
■後書き■
や、なんか……どーでも良い話です(笑)。
取り敢えず謝っとこう。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……!!!!!
でも私の理想の日乱は書けました。
ギャグやっててもシリアスやっててもお似合いの二人がのんびーりと平凡に素朴なことしていて欲しいな、と言うテーマ。
共白髪は私の理想でもあります(笑)。
要はずっと一緒にいて欲しいな、と。
それこそ年とっても一緒に、縁側で茶すすってて欲しいなぁーv
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