23. With my compliments "謹んで贈呈"









 四月に入って間もないある日、そう言えば、と芝村が速水にこう訊ねた。
「瀬戸口の誕生日プレゼントは会議にしないのか?」
 この質問に速水はきょとんとしたあとぽややんと笑う。
「うん……だって、流石に誕生日プレゼントに週刊トレンディ贈る奴は居ないだろうし」
 そういう問題でもない。と芝村は思ったが特に口には出さずに頷いた。
「まあ、それもそうだな」
「だから僕は決めたよ。彼に週刊トレンディを一年分贈ろうって」
 ……。
 流石の芝村もこれにはあぜんとする。
 思わず見開かれた彼女の丸い瞳を人知れず可愛いなぁvと笑う速水にも気付かず、とにもかくにも一番問題がある部分を反復した。
「い、一年分?」
 いつでも冷静沈着で完璧を志す恋人の珍しく驚愕に満ちあふれた声を、速水はお得意の笑顔で受け止める。
「それも全部同じ号を!!」
 ……いや、そんな聞いて驚けみたいな声で告白されても。
 思わず芝村の頬を冷たい汗が伝った。(思わずで流せるものじゃないです汗は)
 常々思っていることなのだが、速水はやはり凡人とは一線を画している存在であると芝村は考える。
 頼りなく思えた笑顔が実は揺るぎないものだったと知った時、芝村たるものとして相応しいと心の底から思ったのだから。芝村の育ちでもないものがこうまで芝村なのは本当に素晴らしい。寧ろ今からでも良いから速水厚志から芝村厚志に改名して欲しい。
 芝村の頭の中をどうにかこうにかその路線から離れようとする思考が次々と飛び交った。
 しかしきらきらとまるで邪気がないかのような、「どう思う?」と問いかける視線がそれを許さない。
 ゆえに芝村は重い溜息を吐くのだ。
「一年分の意味がないではないか……と言うか寧ろ新手の嫌がらせか?」
 同じ号の雑誌を一年分も貰って、喜ぶ者などそうは居まい。
 芝村はもともと雑誌を好まないから良く分からないが……だからこそ自分がそんなものをプレゼントとして貰ったら即古紙回収に出す。
 しかし彼女の応えに、速水は全く噛みあわない返答をした。
「絶対面白いよね。お金もかかるから誰もやらないよこんなこと」
 よね、と同意を求められても困る。
 どうせなら「絶対面白いよ。お金もかかるから誰もやらないよね、こんなこと」と言って欲しい。それなら当然のことのように頷けるのに。
 絶対面白くないと断言できる芝村はと言えば頭を抱えてしまいたくなった。
 いや寧ろ、もしかして速水は瀬戸口が怒ったり困ったり狼狽したり熱くなったりツッコんだり、要するにそういう場面を見るのが楽しいのではないだろうか。
 だから「面白い」などという単語が飛び出してくるのでは。
「確かに誰もやらないだろうな、そんなことは」
 するりと問題点をかわす芝村に、速水はぱぁっと頬を薔薇色に染めた。
 乙女かおまえは。とツッコみたかったがそんなところが好きなので何も言えない。
「きっと驚くよ!!」
 当然である。
 週刊誌(しかも同じ号)を一年分も贈られて驚かないようであればかなりの大人物だろうし、そもそも最初から速水に遊ばれてはいまい。
「ああ。そして怒るだろう。まさか金をかけて怒らせる輩が居ようとは……速水、おまえも随分と芝村だな」
 質の悪い芝村、と付けたかったがここはぐっと我慢だ。
 そもそも瀬戸口の為に恋人の機嫌を損ねるほど、芝村も愚かではない。と言っても速水が芝村に対して怒ることなどないのだが。
 精一杯の芝村の返答に気付いた様子もなく、また気付いてもどうせ大して動じもせず、速水は芝居がかった仕草で両肩を竦め、クックックと忍び笑いをした。
「お代官様こそ〜」
 ……芝村にはそれが時代劇で定番の悪役の真似だと言うことがいまいちピンと来ない。
 ゆえに憮然とした、真面目くさった顔で答えた。
「誰がお代官様だ」


 4月7日。
 速水は結局瀬戸口に小さい紙切れとスポーツ用車椅子を贈った。
 瀬戸口はそれを即刻裏マーケットへ売りに走っている。(小さい紙切れはさすがに売れないが)
 受け取った瞬間はやはり驚きそして怒ったようであったが、裏を返せばこれは役に立つと思い立ったらしく授業が終わるなり仕事もしないで売りに行った。
 それを見た芝村が首を傾げたのは言うまでもない。
「……週刊トレンディ一年分を贈るのではなかったか?」
「ああ。止めたんだ、あれ」
 賢明だ、と芝村は心の中で呟いた。
 誕生日にまで遊ばれたら瀬戸口がいくらなんでも哀れである。
「良く考えたら週刊誌を五十冊も置いてある店がなくて、注文するのも面倒だったんだよね。わざわざ労力とお金を使ってやるほどのネタでもないか、と思って」
 ネタだったのか!! というツッコミは置いておいて。
 速水の愛のなさが結果的に瀬戸口の身を救った。
 とは言え瀬戸口にとっては万々歳であろう。
 あとで聞いたところ、瀬戸口は結局スポーツ用車椅子が未使用であった為マーケットの親父を相手に原価で買い取らせると言う偉業を成し遂げた。
 そして彼のこの転んでもただでは起きないファイティングスピリッツから武勇伝が出来たらしく、以降小隊の勇者として讃えられたことは言うまでもない。


 4月7日。
 この日は瀬戸口の誕生日だった。
 そして勿論、恋人である壬生屋は瀬戸口に誕生日のプレゼントを用意していた。
 ……熱血飲料ファイトと機動飲料ムーブを、各10個ずつ。
 オペレーターである瀬戸口があまりにも能力を軽視しすぎる為、彼の生存確率を少しでも上げたいという、それは壬生屋の愛であった。
 
十万円の愛。
 そのあまりの重さに、瀬戸口は涙したと言う。
 しかしその後それは壬生屋の仕組んだいたずらで(勿論ファイトとムーブも受け取らせたのだが)、きちんと心ときめくイカスネクタイをプレゼントし、やはり瀬戸口を泣かせたという話がまことしやかに流れた。
 そこで、速水と壬生屋は目的は違えど性質が良く似ているのではないか、という嫌な結論に達してしまった瀬戸口の、自身の誕生日が果てして良い日だったのかどうかは……定かではない。







 ごめんなさい。瀬戸壬生ではない上に小説ですらない。
 コネタ集になってしまいました。
 瀬戸口ごめんね!!
 壬生屋からのプレゼントももっと考えようと思ったんですけど時間がなかったので結局こんな感じに。
 イカスネクタイは遠坂×田辺でしょ!とセルフでツッコミつつ。
 本当は速水と芝村の瀬戸口誕生日話に瀬戸壬生を絡ませてちゃんとした小説にする予定だったのですが、時間が足りなくて敢え無くコネタに。
 来年もまだ私がサイトをやっていたら、来年頑張りまーす(汗)。


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