19. So the story goes "こんな噂があるんだ"
(瀬戸口隆之×壬生屋未央)
海に行きたいの。
とののみが言ったから、瀬戸口はもちろん賛成した。
海に行きたいの。
とののみが言ったから、壬生屋も当然賛成した。
そしてののみの「うわあ、じゃあ、三人でいくのね!」という嬉しそうな声にはっとして瞳を見合わせた。
例によって例の如くお互い意識し合いながら打々発止のやり合いを常とする瀬戸口・壬生屋両名のことである。
二人とも、親しい(それを言ったら彼女と特別仲が悪い者など小隊には居ないが)ののみの提案に是非もなく頷いたのであるが……相手が悪かった。
しかも行き先が海である。
更に言えばののみ御所望の壬生屋の弁当付きである。
これを聞いた滝川はこう語った。
「……それはもうほとんどデートじゃないか? くう、俺も彼女欲しいぜ!」
これを聞いた加藤はこう語った。
「最初はどうにかしよう頑張ったけどな、もう好い加減悟ったわ。痴話喧嘩は犬も食わんてこういうことなんや、てな」
さて、当の本人たちは砂浜の熱気にやられたように、赤い顔で目を合わすことも出来ないでいた。
壬生屋の水着は何とビキニ。パレオを巻いてはいるが、普段の彼女を考えれば露出は限り無く大きい。
なるべく視線を交じらせないよう一人元気で朗らかなののみを挟んでいる姿は、カップル以上に既に親子のようであった。
「おいしいねっ!」
にこにこと壬生屋の弁当を食べているののみの声に、二人とも微笑んで隣を向き……ばっちりと見つめ合ってしまった。壬生屋の耳がボッと赤くなり、瀬戸口は瀬戸口で慌てたように手にした弁当を頬張った。
「その……うまいよ」
「あ、有難うございます……」
瀬戸口が壬生屋の弁当を毎日食べられる日も、遠くはないかもしれない。