dearest
子供の頃、木から落ちて大怪我をしたことがある。
小さな体に負った傷は痛くて、苦しくて、そう言えばギンがあんな顔をするのも、初めて見たんだった。
まるで自分が痛いとでも言うような、いつもの笑みとは違う顔を。
そんな風に気遣った顔をされるのが何故かその時悔しくて、屈辱とでも感じたのか、あたしは精一杯笑った。
「大丈夫。あたし、強いもの」
そうでしょ? と笑ってみせると、ギンは目に見えてホッとした顔で力を抜いて「そやったけか?」と憎まれ口を叩いて。
「乱菊は強いもんなぁ」
いつもいつも、何でもないことのように、繰り返された言葉。
痛い時もこうして笑うことが強いということなら。
その時にあたしは知った。
強くなくちゃいけない。
あたしが弱いとギンがあんな顔をするんだから。
そしてギンは強いあたしが好きだと言うんだもの。側に居るなら、ギンが心配も出来ないほど強い女が良い。
誰にも負けない、何にも負けない。いつでもどこでも強くあれる女が良い。
そうして目指すものに無理があろうと何だろうと構わなかった。肩を預けようなんて思うことすらなくて。
一人で立てると証明すること。それがギンと一緒に居られる条件で。
「あたしは強い」
この言葉に否を唱える人は誰も居なかったから、いつしか麻痺して行った。
置いて行かれることが怖かった。何も言わないで背を向ける人だったから、いつも必死だった。見捨てられたら、あの時に終わったかもしれないこの命すら意味がなくなるような気がして。
だからいつも目を凝らしてあの背中を追いかけた。
見失ってしまったらこの先どうしたら良いのか分からなかったから。
足元が見えなくなる恐怖。他の誰より気まぐれで頼りにならないあいつこそを、どんな時でも人知れず頼っていた。
強いつもりで、一人で立っているつもりで、この時あたしは誰よりも情けない弱者だっただろう。
多分愛情なんかじゃなかった。自分のエゴだった。その為に強くありたかった。だから、それは。
――それはきっとひどく歪んだ、いびつな強さだった。
続く。
続きます。
そして、えー……信じがたいことにこんなのでも日乱です(汗)。
私の中でのギン乱日のカタチ。
一応根本にあるものは恐らく同時更新のギン乱と同じかと思われます。
私にしては珍しく場面場面で区切っての更新になるかもしれません。取り敢えず全部書き終わってるんですけど、これを整えて順次アップします。
とか言いつつものごっつ時間かかったら笑ってやって下さい。
ブラウザバックでお戻り下さい。