dearest3
ある時任務中に、あたしは虚との戦いで負傷した。
「松本副隊長っ!!!」
耳に残ったのは隊員の悲鳴。ひどく痛々しい声で叫んだのが印象的だった。
返事を……大丈夫だと返そうとしても声が出ない。初めての感覚に、あたしは混濁していく意識の中で必死に繰り返していた。
大丈夫。あたしは強いから、大丈夫。
とくん。
時間が経ったのか、それとも数刻後だったのか、意識を取り戻したのは四番隊に治療を受けている最中だった。
身体が動かせないほど弱っているようなので首だけ動かして周囲を確認すれば、目が合った卯之花隊長が笑いかけてくれる。
笑えるということは大丈夫だということだ。ホッと息を吐くと、頭上で堪えていたような、押し殺されていたような長い吐息が聴こえてきた。
驚いて真上に視線を移すと、日番谷隊長が立っている。
苦々しい表情は普段から顰められている眉を因り一層濃くしていた。
「……無理はするな」
その声は表情とは裏腹に静かだったのだけれど、感情を殺した上で放ったような、冷たく鋭い氷の切っ先を向けられたように危ういものを含んでいて、それに驚いて目を見開いた。
怒気ではない。殺気でもない。ただ鋭い感情。
今ここで自分が倒されても、不思議には思わなかっただろう。
それほど穏やかではない空気だった。
けれど日番谷は決して激している訳ではなく。
……この人はあたしのことを心配してくれたのだ。
確かに自分にも他にも厳しい人なのだだとは思っていたが、部下の負傷にこのように感情を表す人だとは思っていなかったから。
こんなことで揺れるなんてやはり子供だなんて、馬鹿にすることも出来なかった。したいとも思わない。
だって、嬉しい。
あたしの不注意を、あたしのミスを、あたしの傷を。
こうまで心配してくれる、この人。
ああ……この人があたしの隊長なんだ。ずっとずっと、ついていく人なんだ。
「たいした傷じゃありません。大丈夫です。あたし、強いもの」
だから、笑って見せた。
出来る限り明るく、出来る限りいつもどおりに。
彼の部下として出来る最大の配慮だと思った。けれど可愛くない女だと思う。
日番谷はこの言葉に呆れたような顔をした。
この瞬間何故かずきりと胸が疼く。
少しだけ、痛い。
「松本。俺は……」
続く。
続きます。時間で切ってないじゃんって感じですけど、次回は日番谷くん視点なので。
あと数話で終わる予定です。
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